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連合という新たな地方政府の形成に当たって、主権者である住民は大きな機会を逃したことになりはしないであろうか。そうした機会の行使として、少なくとも、住民投票や広域計画にある中核施設の計画立案への住民参加などは、検討されてしかるべきであったであろう。
したがって、広域連合は地方分権のモデルになるか、という問に対しては大野広域連合を見る限りでは、イエスともノーとも評価できない。なぜなら、大野広域連合は1つのケースに過ぎないだけでなく、1996年4月に全国初の広域連合が発足してから1年の間に3つの広域連合が設置され、あるいは、準備が終わっていることから、今後さらに創られるであろう広域連合を比較検討することが必要だからである。ただ、広域連合制度の位置づけからみて、一定の地域で一定の条件がありさえすれば、換言すると、地方分権推進委員会でいわれる権限移譲が実現し、国や県に権限移譲を要請するまでもなく広域圏を対象に分権の仕組みが県と広域連合の間で作られれば、相当の可能性を秘めていることは確かである。そこで、「大野広域連合は、広域連合のモデルでありうるか」という問に対しては、現在のところ貴重な第一歩であって、それを一つのレファレンスとするかどうかは、広域圏を構成している自治体次第である。
1)西尾勝『行政学の基礎概念』東京大学出版会、1991年、420頁。
2)同上、421頁。
3)以上の文脈から、本稿では事実として垂直的政府間関係が存在するという前提に立ちながら、あるべき姿としての政府間関係=水平的政府間関係を意味する場合には「水平的政府問関係」というカッコつきで言葉を用い、事実上あるいは現行制度上の同レベルの自治体の関係を意味する場合には単に水平的政府間関係あるいは自治体間関係という言葉を用いることにする。
4)鳴海正泰『現代日本の地方自治と地方財政』公人社、1996年、122−123頁。
5)1965年の合併特例法施行後の全145の市町村合併について調査をした「平成6年度市町村の自主的合併の推進方策等に関する調査研究報告書」(『地方自治』1995年7月号、No.572に所収。)では、市町村の合併を3つの類型に分けている。それらの基準は、類型I−合併関係市町村の規模に着目、類型?U−合併市町村の置かれている状況に着目、

 

 

 

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